「出向」とは、現在の会社に籍を置いたまま、別の会社で働くこと。
一般的には、
「期待されている若手が、経験を積むため」だったり、
「そろそろ定年を迎えるシニアが、転籍を見越して」、
出向させることが多い、と言われています。
そう、思っていたのですが。
「出向です」と言われたとき、筆者は40代。
当然「若手」じゃない。だからといって、「そろそろ定年」でもない。
正直「なんで、自分が!?」という疑問が、頭の中をずーっと、まわっている状態でした。
もしかしたら、筆者と同じように、
「どうして、自分が出向になったの???」
と、不安に感じている人も、いるんじゃないかと思い、今回まとめてみることにしました。
出向とは:在籍型と転籍型
まずは、出向について。出向と転籍の違いについて、押さえておきましょう。
出向とは
出向とは、出向元企業との雇用関係を残したまま、出向先企業とも雇用関係を結ぶ形態のこと。
出向元に籍が残るので「在籍型出向」とも、呼ばれています。
出向期間は、事前に決めていて、その期間が満了すると、出向元に復帰します。
出向は、業務命令であり、出向辞令を受けたら、基本的には断ることができません。
(筆者は、この「出向」にあたります)
転籍とは
「転籍」とは、出向元会社との雇用関係を解消し、出向先会社のみと雇用関係を結ぶ形態のこと。
転籍は、会社側が勝手に決めることはできなくて、
現在の会社、転籍先の会社、本人、
この三者が合意して、初めて成立します。
出向とは違って、本人が断わることも、可能です。
(実際には、かなり断りづらい状況になることも、多いですが…)
出向と転籍がセットになり、「転籍型出向」と呼ばれることもあります。
転籍型出向の場合、出向期間中は、出向元会社に籍がありますが、出向期間が終わると、出向元会社には戻らず、出向先会社に籍が移ります。
この場合も、出向自体は断れないものの、転籍にあたっては、三社合意が必要となっています。
※「出向って、断れる?」← いえ、断れないです…
社員を出向させるための条件
いくら社員とはいえ、会社側が、勝手に社員を出向させることはできません。
出向は、厚労省がその「条件」を定めており、必ず、その条件を満たしていなくてはならないんです。
条件を満たせなければ、職業安定法の「労働者供給事業」にあたり、出向させることはできません。
出向の4要件:
① 労働者を離職させるのではなく、関係会社において雇用機会を確保する場合
厚⽣労働省 「労働者派遣事業関係業務取扱要領」より
② 経営指導、技術指導の実施として⾏う場合
③ 職業能⼒開発の⼀環として⾏う場合
④ 企業グループ内の⼈事交流の⼀環として⾏う場合
出向に選ばれる人の特徴
さて、出向には、どのような人が選ばれるのでしょうか。
ここからは、その特徴を見ていきましょう。
将来を担う若手層
会社側は、会社の利益につながる前提で、社員を育成します。
特に優秀だと思われる社員には、特別な手間や、費用をかけて、育成します。
その育成方法の1つとして、「出向」が使われることも。
現在の会社では、経験できないような、他業種や、他職種、役割などを与えることで、より早く成長させようとするのです。
「出向に選ばれるのは、優秀な人だ」
といわれるのは、こういった背景があるからです。
定年が近いシニア層
多くの会社には、定年制度があります。
いつまでも会社に残られてしまっては、新しい人や、若い人を雇用できないからです。
そして、定年が近くなってくると、関連会社や、取引先に、
「うちの社員を、転籍させてもらえませんか?」
と、打診する。
打診された方も、
「その会社とのつながりを、強化できるなら」
「年齢は高くても、自分の会社では採用できないような、優秀な人材なら」
といった期待で、出向、そしてその後の転籍を受け入れる。
シニア層の出向や転籍は、そのような流れで、決まっていくことが多いです。
最近の事情…
最近は、出向させる人を選ぶのに、苦労することが増えているそうです。
その理由の1つは、若い世代が減ったこと。
今までなら、多くの若手層の中から、特に優秀な人を選び、出向させていましたが、その若手層が減ってきているのです。
しかも、彼らは、仕事よりプライベートを重視する。
「これは貴重な機会なんだよ」
と言っても、意に沿わなければ、あっさり、辞めてしまいます。
出向が、育成として、機能しなくなってきているのです。
また、シニア層の出向も、厳しくなってきています。
以前なら「課長をやっていた」というだけで、いくらでも天下り先がありましたが、昨今では、どの企業も経営が厳しく、簡単には、受け入れてもらえません。
若手を出向させれば、退職リスクがある。
シニアを出向させたくても、出向先から断られる。
泣きっ面に蜂、状態なわけです。
実例:筆者が出向に選ばれたワケ
筆者の場合、出向が決まったのは40代。
「もう若くもない、かといって、シニアでもない」
中途半端な年ごろです。
「なぜ、出向に選ばれたのか?」は、ずっと疑問でした。
ですが、そのなぞは、意外なところで、判明しました。
実は、筆者が出向する前に、2名の出向者がいたそうです。
どちらも、20~30代の若手社員だったそうですが、仕事に耐えられず、あっさり退職してしまったのだとか。
出向先での仕事は、お世辞にも、やりがいのある仕事とは、いえません。
そんな仕事のために、出向させられて、やる気を失ってしまったのでしょう。
退職してしまったのなら、代わりの人を出さなくてはいけない。
かといって、また若手を出向させて、辞められては困る。
ということで
「つまらない仕事でも、辞めずに、続けられる人」
として、筆者が選ばれた、という事情のようです。
そうとわかれば、納得。
会社生活が長く、40代にもなれば、普通、簡単には、辞めないですよね。
筆者の場合は、これが結論のようです。
まとめ
今回の記事では、「出向に選ばれる人って、どんな人?」「どうして自分が、出向に選ばれてしまったの?」と悩む人に対し、出向に選ばれやすい人の特徴や、筆者の実例を紹介してきました。
出向といえば、
「優秀な人が選ばれやすい」とか、
「いやいや、50代後半のシニアが選ばれるよね」
といったイメージをお持ちの方もいるかと、思います。
実際、そのようなケースが多かったのも事実。
ですが、最近は、さまざまな事情で「それに当てはまらない」ケースが増えていることも、ご紹介してきました。
「どうして、自分が選ばれたのか?」
という理由が、どうしても見つからない場合、
「他に誰もいなかったから」
という単純な理由、なのかもしれないです。
※「出向すると、給料って減っちゃう?」← 筆者は、ほとんど変わりませんでした
※「 出向するしかないけど、つらい」← 筆者は、キャリア相談で、モチベーションを取り戻しました